【読書感想文】インテグラル理論

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□目次

 

□著者紹介

ケン・ウィルバー

現代アメリカのニューエイジの思想家、トランスパーソナル心理学の論客、哲学者。アメリカ合衆国オクラホマ州生まれ。心理学の範疇を超えたアメリカを代表する哲学者で[1]インテグラル思想の提唱者である。東洋の思想と修行の影響を大きく受けており、東洋の宗教的な知見、霊的発達の思想と現代心理学を総合的に統合するという巨大な試みを成し、「フロイトブッダを結合させた」というキャッチフレーズで知られている。

Wikipediaより引用)

 

インテグラル理論の概要

インテグラル理論」は、人・組織・社会・世界の全体像をより正確につかむフレームワーク。「インテグラル(統合的)」であるとは、差異の中にある共通性を大切にすること、多様性の中にある統一性を尊重することを意味する。

Amazonより引用)

 

インテグラル理論の3つのポイント

紹介文だけだと分かりにくいので3つのポイントにまとめる。

  1. 全ての事象・物事はI,we,it,itsの4象限の観点から考察できる
  2. 各象限の中に発達段階がある
  3. 実践的である

①全ての事象・物事はI,we,it,itsの4象限の観点から考察できる

以下の図は「人間」の領域を4象限に分けたもの。
横軸が「主観ー客観」。縦軸が「単数ー複数」となっている。
このフレームは、政治や医療、教育などに置き換えて使うことができる。

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インテグラル理論 多様で複雑な世界を読み解く新次元の成長モデル Kindle版より引用

②各象限の中に発達段階がある

上の図の各象限の中にそれぞれレベルが記載されているように、各象限で発達段階がある。あくまで発達段階なので、それぞれのフェーズは上位のフェーズに含まれているものと考える。(レベル1を経ないと2には到達しない)
※ここでいう「発達」とは気遣いと思いやりの範囲の拡大、自己中心性の減少を指す。

また、本書では、どんなものでも4象限すべてを考慮して発達させるべきとある。
どこか一つの象限のみだけ発達した場合、歪みが生じる。

例えば、技術(客観部分)ばかり発達しても、それを扱う思想(主観部分)が発達していないと使い方を誤る。思想の未熟な原始人に核爆弾をもたせるようなもの。

ちなみに、「統合」は左側の象限の「7」にある。

③実践的である

本書では以下のテーマについてインテグラル理論をどう応用するかが紹介されている。

例えば「ビジネス」ではマネジメントについて以下のように分類できる。

インテグラル理論 多様で複雑な世界を読み解く新次元の成長モデル Kindle

 

「医療」では以下のように分類できる。

インテグラル理論 多様で複雑な世界を読み解く新次元の成長モデル Kindle

以上のように、どんな事象においてもメタ的なフレームを提供し、分析することができる。わたしたちの日常生活、人生においても考察された本も多数出版されている。


現代の研究や理論は、特定の事象のみにしか適応されないものが多い。すべての人において実践的とは言えない。

 

□個人的に興味のあった部分

▼段階に上位・下位があること

だいぶ過激だと思う。今まですべてフラットなものだと思っていたけど明確に「発達段階」と定義している。ここの部分は根拠をちゃんと追っていきたいなと思った。

▼宗教に関する考察

「狭い宗教」から「深い霊性」に至る部分【本書説明】

これは自分の体験を言語化された感覚だった。もともとクリスチャンホームで生まれ、海外旅行やトルストイの人生論を読んだことによって狭い宗教から深い霊性に導かれた感覚があった。

リベラリズムに関する考察

リベラリズムは自己矛盾をはらんでいる。リベラリズムも主観的な領域(左側の象限)から生まれたものであるのにも関わらず、主観的な領域(左側の象限)を否定し右側の客観的な領域のみを"現実"としてみている。【本書説明】

また、リベラリズムは深い霊性に至るための手段でもあった狭い宗教の神話的部分をすべて切り捨ててしまっている。【本書説明】

主観的な領域(左側の象限)を切り捨てて進んでしまった社会は宮台真司のいう「クソ社会」と似ているものがあると感じた。「グローバリズムによる空洞化」や「トランプ大統領の就任などで見られる各国の自国主義への揺り戻し」なども説明がつく。

一度「ブルー(神話的な自己)」を味わい尽くすという、宮台真司の崩壊への加速主義についても理解ができた気がする。

▼グリーン(多元主義)についての考察

多様性を重視するがゆえに「多様性を重視しない主義」を認めず排除しようとしる自己矛盾を起こしている。【本書説明】

また、多様性を重視するがゆえに、自己を重要視し過ぎ歪んだ強烈で病的な自己愛(ナルシズム)を抱えている。これは孤立した自己に繋がり、反比例して統合から遠のく。【本書説明】

自分もその傾向にあると感じた。大学生の頃よく「人それぞれじゃん!」と語気を強めて話を終わらせてしまっていたことを思い出した。そして自分が世界の主人公だと思っていた。

 

□感想

事象をメタ的に認知するうえでのフレームワークを得ることができた気がする。人生の目標を立てようとしたとき、何となくしっくり来ていなかったのはどこかの象限に偏っていたからんだなと思った。(それまでは自分が気分屋だからコミットしたくなったりしたくなくなったりするのかなと思っていた。)

あとは、どんな人にも当てはまることが書いてあるので万人が興味をもって読めるなあと思った。

 

 

プロジェクト・デザイン・パターン 企画・プロデュース・新規事業に携わる人のための企画のコツ32

 
題名:プロジェクト・デザイン・パターン 企画・プロデュース・新規事業に携わる人のための企画のコツ32
発行:  翔泳社
著者:井庭 崇  , 梶原 文生 
 
 
企画づくりについての本でした。建築分野にある概念を「企画づくり」に対して応用させることで、企画のコツを説明しています。
 
内容としては企画を作るうえでのコツをいかにして一般化していくか、他者と共有することができるか、が書かれており、「パターン・ランゲージ」といって経験則を言語化し共通パターンをあぶり出して名前をつける手法を使っています。後半部分では名前をつけた企画のコツが後半部分に紹介されています。
 
 
企画の本を何冊か読んできましたが、概念が整理され項目ごとにまとめられているものは意外と少なかったので、企画するときの辞書的に使えそうだなという印象を受けました。
 
 
□目次
 
はじめに
第一部 企画のコツを共有する
第二部 プロジェクト・デザイン・パターン
第三部 プロジェクト紹介
おわりに
 
 
特に、印象的だった言葉は以下三点です。
 
 
P.57-自分の企画の哲学を達成し続けることで、他の企画者には真似のできない価値を提供でき、その人らしさを確立した企画者となる。こうして、自分がやりたいと思う仕事が舞い込んでくるようになる。
 
 
p.68-情報を(中略)「落ち着いた空間」「躍動感」「グリーン」....と分類していくといろいろな場面でその引き出しが活用される可能性が高まります。
 
 
p.123 「○○さんだったらこの企画に対して何というだろうか」
 
 
 
企画のコツはもちろんのこと、仕事法にも参考にできそうな箇所が諸所ありました。仕事もひとつの企画であると感じます。
 
企画者として大事な「抽象化するスキル」をパターン・ランゲージを使うことで伸ばすことができそうです。
 
また最近、言葉の壁にぶつかることが多いので、想定される相手に対して
「しっくり来る言葉」をさがす。ためにも参考になるタイムリーな一冊でした。